押し潰された街はすでに悪酔いのしぐさで
スニーカーが喧騒につづいていた
それで――。いい降らした微笑
視線のさきであったものを殺せ
みづからの輪郭を見失っていった心臓
おわりもなかったはずなのに、蝶番
肉に潜むものを半開きの口元だけがわずかに
キィと軋む 骨の数だけ
疾走れるかもしれないタイプライター
羽化するたび歯列に触れてトンと遠ざかる
解読されていない影砂なら祓う
ときに無言のまま動じて
おく息は曇らず、舌でとけるひのカゲが
腹をすかしたジャズのリズムへ歯向かう
根も葉もないくせに、わずかに染みる
くうを切りさく破片はピシリとひかりあった
しばらくはどこか数秒前のまたしづんでいる
その手の温度にりゆうを騙る
蓄音機の針がおくで直ぐとどく
だれか喉を締めた鍵穴をのぞいてみる
ザリザリ ふるいインク痕に足をよせ
埋め尽くすようかいた窓窓
まちかどのパンジーを呑み込んでゆくのに
靴紐を結うはたらきに距離もない
壁に据えられた私がいちどだけ
呼吸し遅れてククッとわらった
つぶれた聖書の片々が乾いた唇の端に
ファタールな展翅のために
私はまだ余韻をほどきどいて
そら、宙に浮く寸前でサクと咲え
天秤は生きていた証で喉を鳴らす
水たまりへ光らせる その星は幾千のわたし
辷ては「ここ」にあり述べては「ここ」にない
今朝の新聞と綴られるまばたきの隙間で
天使の指は モーテルで ゆっくりと漏らした
白い蜘蛛はゆりかごの輪郭だけえがいて
まっすぐに流れるネオンを数えあげるけれども
はじまりもなく、雨粒はポツ、ポツきざまれて
ステップの数だけ決意できないばかりか
私の命脈はまたカツカツ、拍子を踏むのです
赫錆びた夜の裂け目を開けるからだで
ギギ と咀嚼できない衝撃を置き去りにする
シャンデリアの死骸を照らす靴音だけ往復してよ
絡まるイヤホンが言いそびれたオトガイを叩く
2025/04/01